2025-03-28
システム開発における品質計画
品質計画とは、プロジェクトやシステムの品質基準、目標、実施すべきアクションを事前に定義するプロセスです。開発全体を通して品質を確保するための戦略的アプローチで、プロジェクトの特徴を考慮して、各開発フェーズでどのように品質を担保するかを計画します。
品質計画が重要な理由
①リスク低減:システム開発では、後から発見された問題ほど対処が難しくなります。リスクが高いポイントを事前に判断し、品質計画を立てて行動することで重大な障害の発生確率を下げ、プロジェクト全体の成功率を高めることができます。
②コスト削減:設計段階で見つけた問題は修正が簡単ですが、本番稼働後には関連システムへの影響調査や再テストなど多くの追加作業が発生します。本番環境での修正コストは初期段階の約100倍になるというデータもあります。
③顧客満足度向上:品質の高いシステムは安定して動作し、使いやすいため、ユーザーからの評判も良くなります。ユーザーの信頼獲得と次の案件獲得にもつながります。
④スケジュール通りの完了:品質問題が少ないプロジェクトは、予定外の修正作業が発生しにくいため、当初の計画通りに進みやすくなります。
品質計画の進め方
①プロジェクトの特性を分析(規模、複雑度、リスク要因など)
②各開発フェーズで重点的に品質担保すべきポイントを特定
③フェーズごとに適切な品質担保アプローチを選択
④品質目標と測定指標を設定
⑤品質活動のスケジュールと担当者を決定
⑥定期的に品質状況をモニタリングし改善
効果的な品質計画のポイント
- プロジェクト初期段階から品質を意識、計画的な行動を心掛ける
- 関係者全員で品質計画を共有することで認識をあわせる
- リスクの高い領域に重点的にリソースを配分する
- 測定データに基づいた判断と改善を行う
開発フェーズ別の品質担保ポイント
システム開発の各フェーズにおいて、状況に応じて重点的に品質を担保するためのアプローチを以下の表にまとめました。すべてを実施する必要はなく、プロジェクトの特性に応じた効果的なアプローチを選択することが重要です。
フェーズ | 重点的に品質担保すべき状況 | リスク | 品質担保のアプローチ |
---|---|---|---|
要件定義 | 顧客の業務知識が不足 | 業務要件の抜け漏れにより、開発後の仕様変更が頻発する |
|
要件が曖昧または流動的 | 開発の手戻りが多発し、スケジュールが遅延する |
|
|
多くのステークホルダーが関与 | 意見の不一致が発生し、意思決定が遅れる |
|
|
新技術や新しい業務領域 | 技術的な課題や業務フローの誤解が発生する |
|
|
設計 | アーキテクチャが複雑 | 設計ミスによるパフォーマンス問題や拡張性の欠如 |
|
設計者の業務知識不足 | ビジネス要件と設計のミスマッチ |
|
|
将来の拡張性が重要 | 変更が困難な設計になる |
|
|
複数システムとの連携 | システム間のインターフェース不整合による障害 |
|
|
非機能要件が厳しい | セキュリティ・パフォーマンス要件未達成 |
|
|
開発 | 複雑なロジック | バグが多発し、修正コストが増加 |
|
チーム内のスキルレベル差 | 品質のばらつきが発生 |
|
|
複雑な並行開発の実施 | マージ時の競合や不整合が発生 |
|
|
コード品質への高い要求 | 保守性が低く、開発速度が低下 |
|
|
レガシーシステムの改修 | 既存機能の破壊や影響範囲の見落とし |
|
|
テスト | 多彩な業務バリエーション | 重要な業務フローのテスト漏れ |
|
複数チーム間の連携開発 | 連携ミスによる障害発生 |
|
|
複雑なデータフロー | データ不整合が発生 |
|
|
外部システムとの連携 | API変更の影響を受ける |
|
|
複雑なトランザクション処理 | デッドロックや整合性の問題が発生 |
|
|
バッチと対話処理の連携 | 処理の遅延やデータ整合性の問題が発生 |
|
|
ユーザー受入れテスト(UAT) | ユーザーのITリテラシー差 | 操作ミスや理解不足によるトラブル |
|
UI の使いやすさが重要 | ユーザーが受け入れず、定着しない |
|
|
業務プロセスが複雑 | 運用ミスや業務遅延が発生 |
|
|
業務効率向上が主目的 | 効果が期待通りに出ない |
|
まとめ
品質計画は、システム開発の成功に重要な要素です。プロジェクトの特性を理解し、各フェーズで適切な品質担保アプローチを選択することで、高品質なシステムを効率的に開発することができます。すべてのアプローチを実施する必要はなく、プロジェクトの状況に応じて適切なものを選択することが重要です。計画的に品質を作り込むことで後工程での手戻りを減らし、最終的にはコスト削減とスケジュール遵守、そして顧客満足度の向上につながります。
お問い合わせ先
株式会社Sprobe
電話:03-6228-3425
問い合わせフォーム
ご質問・ご相談がございましたらお気軽にお問い合わせください。